THE 総合内科 ~診断力、総合力、感染症~

総合内科医の知の共有 ~ 医療従事者にとっては、臨床に有用な情報を 一般の方に対しては、根拠のある健康情報を提供します

診断学

なぜ、今、診断学が重要か?

当たり前ですが、適切な治療は適切な診断が前提となります。正しい診断が遅れれば遅れるほど、患者さん側の結果(治療経過、予後)に悪影響を与えます。

 

診断の見逃し、遅れ、誤りを「診断エラー」といいます。

診断エラーは患者さん、医療者側双方にとって、起きてほしくないことです。

日本の医療訴訟の原因の30%は、この診断エラーが原因という報告もあります(Tokuda Y, et al. J Hosp Med 2011; 6: 109-14)。

 

診療の場において診断は極めて重要であるにも関わらず、医学部教育やそれに続く臨床研修では、診断学について教えを受けることはあまりありません。

近年、国内外で診断学の重要性が再認識されています。医学生の実習や、初期臨床研修医のプログラムにも、一般内科や総合内科外来が組み込まれるようになってきました。

 

前述の診断エラーに関する論文(J Hosp Med 2011; 6: 109-14)の著者 徳田安春先生を代表に、日本では主に総合診療医を中心に、診断学についての研究、教育が行われています。

2023年2月には「Diagnostic Excellence 総合診療、これからの診断学」をテーマに、第26回日本病院総合診療医学会学術集会が開催されました。

本学会大会長の志水太郎先生は、今後の日本の診断学のリーダーとして活躍が期待されています。今後、日本内科学会、日本病院総合診療医学会、徳田先生、志水先生をはじめとする総合診療の診断エキスパート医のリーダーシップのもと、日本の診断学の更なる進歩を期待しています。

診断エラーが注目されるようになった背景と、総合診療科が必要とされる背景には重なる部分があるように感じています。それは、医学の専門分化と、診断における検査重視の風潮(検査所見に過度に依存)です。過度に専門分化した結果、自分の専門分野以外は診ない医師も出てきました。また、血液検査(数値)、画像検査で異常がみつからなければ“異常なし”と診断されてしまう現象も日常茶飯事です。

総合診療医の武器は、問診(病歴聴取)と身体診察です。

診断に貢献する情報は、病歴76%、身体診察12%、検査11%という報告(West J Med 1992; 156: 163-5)もあり、どんなに検査技術が進歩しようと、問診、身体診察は軽んじられるべきではありません。

 

私自身、診断力を武器とする総合診療医として、診断力の向上を常に目指し、後輩に診断学を伝えていくこともライフワークとしています。

日々の診療や勉強の中で得た知識を蓄積する作業を続けてきました。これらの知識を自分一人だけで持っておくのはもったいない、多くの医療従事者に役立ててもらえるのではないかと思い、Webの場で共有したいと思います。