横紋筋融解とは、骨格筋組織の壊死と、それに伴う筋細胞内成分の血液中への流出と定義され、下記に示すような様々な疾患・病態が原因となります。
横紋筋融解 rhabdomyolysisと似た言葉として、高CK血症 hyperCKemiaがあります。この二つの厳密な区別はありませんが、一般的には、高CK血症のより重篤な例を横紋筋融解と呼ぶことが多いようです。
横紋筋融解を起こすと、大量のミオグロビンが血中に流出、急性尿細管壊死を合併することがあり、問題となります。
横紋筋融解の主要な原因
・外傷
クラッシュ症候群
・労作
激しい運動、痙攣、アルコール離脱症候群
・筋組織低酸素
意識障害、長時間の無動による圧迫、虚血(動脈閉塞)
・遺伝性疾患
解糖系・グリコーゲン分解系の異常(糖原病)、脂質代謝系の異常、ミトコンドリア異常など
・感染症
インフルエンザ、コクサッキーウイルス、EB virus、HIV、レジオネラ、A群溶連菌、黄色ブドウ球菌(pyomyositis)、クロストリジウムなど
・体温異常
熱中症、悪性高熱、悪性症候群、低体温
・代謝性疾患、電解質異常
低K血症、低P血症、低Ca血症、糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧非ケトン性昏睡、甲状腺機能低下症、筋炎
・薬剤、中毒
脂質降下薬(スタチン、フィブラート)、アルコール、ヘロイン、コカイン
・特発性
・その他、症例報告として報告があるもの
破傷風、電気風呂の長時間入浴、危険ドラッグ、水中毒、急性膵炎、種々の医療行為(侵襲的検査・処置など)
診断:
血清CK高値
ミオグロビン尿(赤~褐色尿、尿試験紙で潜血陽性・尿沈査で赤血球増加なし)
横紋筋融解と腎障害
・横紋筋融解症の13~50%が急性腎障害(acute kidney injury; AKI)を起こす。
・どの程度のCK上昇があれば明らかにAKIのリスクが上がるからははっきりわかっていないが、一般的には、入院時のCKが15000~20000U/L未満であれば、AKIのリスクは低いとされる。
・CK値だけではなく、年齢、元々の腎機能、他の腎障害を起こす因子(感染症合併、利尿剤など腎障害を起こす薬剤使用、脱水、アシドーシスなど)など他の要因も重要。
横紋筋融解が腎障害を起こすメカニズム
詳細なメカニズムは不明だが、以下の様な機序が想定されている。
・腎血管攣縮
・近位尿細管障害(ミオグロビンによる直接障害)
・遠位ネフロン管腔の機械的閉塞
予後:
通常は予後は良好だが、原因疾患により異なる。
四肢虚血によるものは致死率が高く、薬物・アルコール中毒によるものは致死率は低い。
(参考文献)
N Engl J Med 2009; 361: 62-72
Harrison's Principles of Internal Medicine 21st Edition、著: Loscalzo Joseph、Fauci Anthony S、McGraw-Hill