比較的徐脈について
不明熱を診る上で、「比較的徐脈」という現象が参考になることがあります。
通常、体温が高くなるほど、心拍数も上昇しますが、特定の疾患群において、体温の高さに比べて比較的心拍数が上昇しない場合があることが経験的に知られております。
比較的徐脈の定義はいくつかある様ですが一例を挙げます。
・体温 40℃で心拍数 130/分未満、または、体温 39℃で心拍数 110/分未満
・体温 39℃で心拍数 100/分未満、39.5℃で心拍数 110/分未満、40℃で120/分未満
比較的徐脈をきたす疾患
・感染症
レジオネラ、リケッチア、腸チフス、マラリア、黄熱、デング熱、レプトスピラ症、オウム病、Q熱、ペスト、バベシア症、ウイルス性出血熱
(偏性細胞内寄生菌が多いが、マイコプラズマ感染症は比較的徐脈をきたしにくい)
・中枢神経疾患(中枢熱)
・悪性リンパ腫
・薬剤熱
・詐病
発熱の原因がよくわからない場合、入院患者の場合などは経過表(温度版)をみて、発熱に伴って心拍数も上昇していないか注意するとよいかもしれません。
薬剤熱
薬剤熱は比較的徐脈の原因として有名ですが、薬剤熱における比較的徐脈の頻度は約10%と以外に低くなります。
薬剤熱を見分ける方法として、「薬剤熱の比較3原則」という覚え方もあります。
「薬剤熱の比較3原則」=比較的徐脈、比較的元気(熱のわりに)、比較的CRPが低い
注意点
※以下の場合、比較的徐脈とは判断できない
・38.9℃未満
・13歳未満
・ペースメーカー植え込み後
・不整脈
・β遮断薬内服中
(参考文献)
Fever 発熱について我々が語るべき幾つかの事柄、大曲貴夫ら、金原出版
この1冊で極める不明熱の診断学、監修:野口善令、編集:横江正道、文光堂
Harrison's Principles of Internal Medicine、著: Loscalzo Joseph、Fauci Anthony S、McGraw-Hill