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腎性低尿酸血症とは ~低尿酸血症の鑑別~

時々、健康診断の二次検診で「尿酸が低い」と指摘されて外来を受診される患者さんがいらっしゃいます。自覚症状や重篤な基礎疾患がなく、尿酸を低下させる薬剤を内服していない場合、腎性低尿酸血症の可能性があります。

◆Key Points◆ ・血清尿酸値が低い(特に、2.0mg/dL未満)場合、腎性低尿酸血症を疑う
・血清尿酸値が2.1~3.0mg/dLの場合は、軽度の腎性低尿酸血症の可能性がある
・腎性低尿酸血症の合併症として、運動後急性腎障害および尿路結石が重要

腎性低尿酸血症の診療アルゴリズム(腎性低尿酸血症診療ガイドライン 日本痛風・核酸代謝学会 より引用)

 

腎性低尿酸血症(renal hypouricemia; RHUC)

・日本人に多く、有病率は日本人の0.3%程度と推定

・原因:腎尿細管上皮細胞における尿酸排泄亢進(再吸収不全)

・機序:腎尿細管上皮細胞における尿酸再吸収輸送体遺伝子の機能消失型遺伝子変異

    URAT1/SLC22A12の変異(=RHUC1)

    GLUT9/SLC2A9の変異(=RHUC2)

 

診断:

 腎性低尿酸血症の診断指針(腎性低尿酸血症診療ガイドライン 日本痛風・核酸代謝学会)を参照

 FEUA

 外来でも血液検査、尿生化学(随時尿でも可)検査ができれば、FEUAの測定は簡便です。

FEUAの計算式、正常範囲は下記の通りです。

 FEUA=(UUA×SCre)÷(SUA×UCre)×100

  正常値:8.3 (5.5~11.1)%

  FEUAは、RHUC1では30~70%、RHUC2では100%以上となることが多い

 

腎性低尿酸血症の鑑別疾患

 低尿酸血症の機序として、尿酸の排泄亢進と、産生低下の2つがあります。

 しかし、いずれも自覚症状や全身状態から鑑別が可能なものや、非常に稀な遺伝性の疾患ばかりです。

腎性低尿酸血症の診療アルゴリズム(腎性低尿酸血症診療ガイドライン 日本痛風・核酸代謝学会 より引用)

 

合併症・問題点、その対策

 ・運動後急性腎不全(acute renal failure with severe loin pain and patchy renal ischemia after anaerobic exercise; ALPE)

 ・尿路結石

対策(生活指導)

・水分摂取を増やす(特に運動前)

・過激な運動は控える

・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)内服時は運動を控える

 

(参考文献)

腎性低尿酸血症診療ガイドライン 日本痛風・核酸代謝学会 痛風と核酸代謝 2018; 42: 1-51. (PDF)