THE 総合内科 ~診断力、総合力、感染症~

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診断力を上げる方法

診断力を上げる方法を考えます。

診断という行為は、目の前の患者さんが困っている症状の原因を明らかにすることです。

「すでに診断が付いている自分の専門分野以外の患者さんは診ない」という例外的な医師を除いては、どの診療科の医師にもある程度求められる能力です。

さらに、診断力を武器とする総合診療医・総合内科医においては、診断困難なケースを他科から相談されることも多く、そこで診断が付かなければ、患者さんは適切な治療を受けられないことになります。

 

診断力を上げるために、下記の様なことが有用と考えます。

 

・疾患や症候学を学ぶ

 ここの近道はないと思います。知らない疾患・病態は診断できません。

 総合診療医であれば、たとえ予後良好な疾患であっても、稀な疾患まで習熟しておくことが望ましいと考えます。

 Harrison内科学は疾患各論だけでなく、症候学も記載が充実しており、お勧めです。

 

・経験する

 Commonな疾患を多く経験する。

 机上の勉強だけではやはり不十分で、実際の臨床での経験が重要です。

 しかし、数多く経験するだけでも不十分で、自分が診断を行ったケースに対して、反省・振り返りが必要です。

 Common diseasesを多く経験することで、その疾患についての病像が自分の中に作られます。そうすると、uncommmonな経過を取るケースや、稀な疾患に出会ったときに、「何か違う」と感じて、診断推論を広げていくことができます。

 

・エキスパートに習う

 診断力に秀でたエキスパートが指導医につき、ともに患者さんをみて、直に指導を受けるのがベストですが、このようなエキスパートなどいない病院の方が多いと思います。

 そこで有用なのが、症例検討会への参加です。地域で開催されるものもあれば、日本病院総合診療医学会学術集会のように、学会のセッションとして症例検討会が開かれるものもあります。このような会では、有名な診断のエキスパートのDrが議論に加わったりします。彼らがどのような思考で診断をしているのかを学びます。

 

 誌上での疑似的な症例の経験も大変有用です。

代表的なものとしては、New England Journal of Medicine(NEJM)Case Records of the Massachusetts General Hospitalと、Clinical Problem Solvingです。複雑なケースにおけるSystem 2の分析的思考や、エキスパートの思考過程を疑似体験でき、非常にためになる特集です。

また、日本内科学会雑誌「今月の症例」、日本病院総合診療医学会雑誌の症例報告、さらには、「medicina」、「総合診療」など商業誌上でも、診断困難例、稀な疾患、非特異的な経過を辿ったケースの報告や、診断をテーマとした特集が組まれることも多く、参考になります。

 

NEJMのCase Records of the Massachusetts General Hospital
1年間で40症例を学ぶことができる
内容は、感染症、膠原病・自己免疫疾患、悪性腫瘍などが多い

 

・診断戦略、診断エラー学を学ぶ

 医師が診断エラーを起こす理由について学ぶことも有用です。システムなどの環境要因や、認知バイアスなどを理解することで、自分が陥りやすい落とし穴に注意を払うことができます。

(参考文献)

・診断戦略: 診断力向上のためのアートとサイエンス、(著) 志水 太郎、医学書院

・診断エラー学のすすめ、(監修) 志水 太郎、綿貫 聡、和足 孝之、日経BP社

 

 

ここで述べた診断力を上げる方法は、他のエキスパートも概ね同様のことを言われており、あまり目新しいものはないかもしれませんが、診断力に秀でた多くのエキスパートたちを育ててきた方法とも言えます。

目の前の患者さんが困っている病の正体を明らかにしたいという意思を持ち、努力を続ければ、必ず診断力は向上していくと思います。