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浮腫の鑑別

◆Key Points◆ ・浮腫は全身性か、局所性か
・(全身性であれば)低アルブミン血症(Alb<3.0g/dL)があるか
・(低アルブミン血症がなければ)心不全かどうか

 

浮腫は、内科外来を受診する患者さんの訴えとして少なくありません。

利尿薬による対症療法を行うだけの診療では不十分で、浮腫の原因検索が必要です。

頻度が多い原因としては、全身性の浮腫では心不全、腎不全、肝硬変、低栄養など、

局所性浮腫は静脈閉塞、リンパ浮腫、血管性浮腫などがあり、これらの鑑別は多くの場合は難しくありません。

しかし、その他にも浮腫の原因は多数あり、すぐ原因がわからない場合も時々あります。

 

浮腫のメカニズム

浮腫の鑑別を考える際に有用なので、浮腫のメカニズムを振り返ります。

浮腫は、「間質における体液の増加」と定義されます。

 

血管内腔と間質との間の水分移動は、スターリング力に左右され、スターリング力を決定する因子として、

・毛細血管内の静水圧

・血漿の膠質浸透圧

・間質の静水圧

・間質液の膠質浸透圧

・血管透過性

・リンパ還流

・高分子の反射係数

があり、これらの因子のどこかの異常、または組み合わせにより浮腫が起こります。

 

浮腫の鑑別の手順

  • 浮腫が局所性か全身性か
  • 頸静脈圧が正常な全身性浮腫(低蛋白血症の有無で分類)
  • 静脈圧上昇を伴う全身性浮腫(心原性浮腫の鑑別)

 

  • 浮腫が局所性か全身性か

 局所性浮腫の原因:

 ①静脈 ②リンパ管 ③炎症 ④外傷 ⑤その他

 このうち③と④は外観で判断可能。

局所の浮腫に静脈怒張を伴っていれば、静脈閉塞が疑われる。

深部静脈血栓症、上大静脈や下大静脈の血栓などが浮腫の原因となる。

その他の③④以外の局所性浮腫の原因として:アレルギー性浮腫、神経原性浮腫、

リンパ浮腫、動静脈瘻などがある。

 

  • 静脈圧上昇を伴う浮腫の鑑別

まずは心原性浮腫の鑑別を行う。ベッドサイドでの指標は、「拍動性の頸静脈圧上昇があるか」どうかが重要で、もしあればうっ血性心不全による浮腫の可能性が高くなる。その他、心タンポナーデ、収縮性心膜炎などが全身性浮腫の原因となる。

 

  • 頸静脈圧が正常な全身性浮腫の鑑別

 低蛋白血症があるかどうかで鑑別を進める。

 ベッドサイドで、低蛋白血症による浮腫かどうかの区別に有用なのが、圧痕性浮腫の性状。浮腫部位を圧迫して、容易に陥没して、圧迫解除後に圧痕がすぐに消失する場合(fast edema)は低蛋白血症による浮腫を示唆する。

※低蛋白血症による浮腫の場合でも、慢性的な浮腫の場合、老廃物の皮下組織への沈着や、線維芽細胞の浸潤により、必ずしもfast edemaにはならず注意が必要。

※fast edema は厳密には「10秒間押した後、40秒以内に圧痕が解除される浮腫」と定義

 

 低蛋白血症あり:ネフローゼ症候群、吸収不良症候群、熱傷、出血、栄養不良、慢性消耗性疾患

 低蛋白血症なし:非圧痕性浮腫を示す甲状腺機能低下症(間質にムコ多糖が貯留)、SIADH(細胞内外へのH2O貯留)、薬剤性、COPD、慢性貧血、特発性浮腫など。

 

浮腫の鑑別についてまとめました。

浮腫の原因病態・疾患は多臓器にわたり、診断が遅れると命に関わるものから、機能性の疾患まで様々です。総合内科医であれば、精通しておきたい症候です。

様々な浮腫の原因の具体的な例は、次記事(こちら)を参考にしてください。