前回、浮腫のメカニズムや、鑑別の手順について記載しました(浮腫の鑑別)。
今回は、浮腫を起こす疾患の具体例を取り上げたいと思います。
浮腫の代表的な原因である心不全、腎不全、肝硬変、深部静脈血栓症など以外の、比較的稀で、知っておくと鑑別に役立つものを挙げました。
薬剤性浮腫
原因となる薬剤の例
・カルシウム拮抗薬(特に、ジヒドロピリジン系)
・β遮断薬
・ARB、ACE阻害薬
・プレガバリン
・ステロイド(コルチコステロイド、エストロゲン、プロゲステロン)
・NSAIDs
・利尿薬(長期投与)
・チアゾリジン
・成長ホルモン
・アマンタジン
・シクロスポリン
・血管拡張薬(ミノキシジル)
・免疫製剤(Interleukin-2; IL-2 製剤、OKT3モノクローナル抗体)
ACE阻害薬関連血管性浮腫:
・ACE阻害薬内服者の0.3~0.7%に発症する稀な病態
・通常は、内服開始1か月以内に、口唇・顔面・舌・腕の腫脹、掻痒、紅斑などで発症
・内服開始から発症までの平均期間は10.2ヵ月(内服開始すぐや、数年以上経ってからもある)
・薬剤中止後1~4日で改善する
リンパ浮腫
一次性:
孤発性(大部分)
家族性(まれ)(リンパ組織の先天的異常:Milroy病、Meige病)
二次性:
過去の放射線治療や手術、悪性腫瘍による閉塞、繰り返す蜂窩織炎によるリンパ組織損傷、その他(フィラリア症、結核、黄色爪症候群など)
特徴:
・痛みのない硬い浮腫(非圧痕性)
・日内変動がない ・2/3は非対称性
・早期は圧痕性であるが、二次的に線維化を起こし、皮膚硬化を伴う非圧痕性浮腫となる
・Stemmer sign陽性(第2足趾基部背側の皮膚皺襞をつまみ上げることが困難)はリンパ浮腫を示唆する。
・診断法:リンパシンチグラフィー、リンパ管造影
・治療の選択肢として、リンパ管細静脈吻合術
好酸球性血管浮腫(angioedema with eosinophilia、Gleich症候群)
再発性のEpisodic- (EAE)と、非再発性で若年女性に好発するNon-episodic- (NEAE)がある。
特徴:
・熱感や圧痛を伴わない非圧痕性浮腫
・末梢血中好酸球増、皮疹(蕁麻疹)、皮膚掻痒感、IgM高値など
・発熱を伴うことがある
・低用量ステロイドが著効(1ヶ月程度で漸減中止する)
特発性浮腫
・20歳代~中年の女性に好発、周期的な両下肢圧痕性浮腫をきたし、明らかな原因がないもの
・血管透過性亢進が関係していると考えられている
・立位で増悪し、夕方には体重が1~2kg増加するほどの浮腫を起こす
血管性浮腫(クインケ浮腫)
・口唇、眼瞼に起こりやすい
・小腸に起こると、腹痛、下痢の原因となる
・喉頭で浮腫を起こすと呼吸困難をきたす
その他、特徴的な浮腫
・黄色爪症候群
リンパ浮腫、両側胸水、爪異常(成長遅延、変色、変形)
・RS3PE症候群
(Remitting Seronegative Symmetrical Synovitis with Pitting Edema syndrome)
左右対称性の手背、足背の炎症性浮腫
・EBウイルス:病初期に、両側上眼瞼浮腫を起こすことがある(hoagland sign)
浮腫の原因について、あまり頻度が多くないものの、一部を記載しました。